フリーランス薬剤師になる方法 <準備編>

目次

  1. フリーランス薬剤師ってどんな仕事?
  2.  フリーランス薬剤師の定義って?
  3. なぜ今フリーランス薬剤師が必要とされているの?
    1. 理由① 薬剤師の確保が難しい薬局がいっぱいある
    2. 理由② 薬局経営が今までよりも利益を出しにくくなっている
    3. 理由③ できるだけ優秀な薬剤師を採用したい
  4. 薬局がフリーランス薬剤師を採用するメリットは?
    1. メリット1 期間を限定して契約することが可能。
    2. メリット2 過去の薬剤師経験が多いため、即戦力になりやすい。
    3. メリット3 直接交渉ができれば、紹介費用がカットできる。
    4. メリット4 フリーランスには、比較的“優秀な”薬剤師が多い。
  5. フリーランス薬剤師になるメリットは?
    1. メリット1 働く場所を選びやすくなる
    2. メリット2 長期の休暇を取りやすい
    3. メリット3 時間単価が高くなりやすい
  6. フリーランス薬剤師になるデメリットは?
    1. デメリット1 収入が安定しない
    2. デメリット2 薬剤師以外の仕事が増える
    3. デメリット3 会社員より社会保障が少ない
  7. フリーランス薬剤師になるには、まず何から始めたらいい?
    1. 「フリーランスってなんか言葉の響きがカッコイイから」「今世間で流行ってるから」「友達がなってるから」
    2. 「今よりもお金を多く稼ぎたいから」
    3. 「今よりも時間を自由に使いたい」
    4. 「今の職場を早く辞めたいから」
  8. 次回テーマ フリーランス薬剤師の3タイプの紹介

フリーランス薬剤師ってどんな仕事?

 フリーランスというと、webデザイナー、プログラマー、イラストレーター、ブロガー、
 トレーダーなど、「パソコンとインターネット環境があればどこでも仕事ができる」
 といったタイプの職業を思い浮かべる人が多いんじゃないでしょうか。

 僕も最初そう考えてて、薬剤師は病院や薬局という場所がないと働けないので、
 フリーランスにはなれないと思ってました。

 でも、調べてみてわかったんです!
 薬剤師でもフリーランスになれるんです!

 世の中には、店舗や設備、チーム作りが必要な職種の人、
 例えば美容師、農家、演奏家、営業代行の人たちでも、
 フリーランスとして仕事をしている方が多くいらっしゃいます。

 その方々と同じように、薬剤師もフリーランスになることができるんです。

 ただし、今フリーランス薬剤師として働いている人たちは
 みんなそれぞれ業態や仕事の内容、考え方や生活スタイルが違うので
 「フリーランス薬剤師はこういう仕事!」とはっきり言えないんですよね。

 この「フリーランス薬剤師になる方法 シリーズ」を読んで、
 フリーランス薬剤師がどんな職業なのかイメージしてみてください。

 フリーランス薬剤師の定義って?

 そもそも「フリーランス」ってどういう人を指すんでしょう。

 Wikipediaによると、フリーランスは以下のように定義されてました。

   特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの技能を提供することにより
   社会的に独立した個人事業主。


 その通りなんですが、このブログではフリーランス薬剤師の定義を、
 もう少し広い意味で捉えていきたいと思います。

 というのも、きっちりとした定義も大切だと思うんですが、
 実際にその人がどのように働いているのかという点の方が重要だと思うんですよね。

 企業や団体に所属してても、個人事業主じゃなくても
 自由度の高いスタイルで働いてるなら、それでいいじゃないですか。

 ということで、このブログ内では

   所属や事業の形態に違いがあっても、
   1つの薬局や同じ企業で長く働くことを前提としていない薬剤師

 を「フリーランス薬剤師」と考えることにしたいと思います。

 一般的なフリーランスの考え方とはズレがあるかも知れませんが、
 その点については少しだけご了承いただきたいと思います。

なぜ今フリーランス薬剤師が必要とされているの?

 世の中では数年前から「フリーランス」という働き方が注目されてますよね。
 名前の雰囲気もちょっとカッコよく感じます。

 年功序列や終身雇用が崩れつつある現在の日本で、
 フリーランスという仕事のスタイルはこの先ニーズが増えてくるスタイルだと思ってます。

 僕自身も現在フリーランス薬剤師として働いていますが、
 今までに最も多く聞かれた質問は「なんでフリーランスになったの?」です。

 そうですよね、多くの薬剤師は病院や薬局に所属して働いてますもんね。
 病院や薬局で正社員として働くのが一般的な中、なぜ僕がフリーランスになったのか、
 そしてなぜ今世間でフリーランスの薬剤師が増えてきているのか、
 その理由についてお話していきたいと思います。

 なぜ今フリーランス薬剤師が増えてるのか。その答えは、シンプルにコレです。

 薬局経営者からのニーズが増加してるから。 

 ではその詳細についてお話していきますね。

理由① 薬剤師の確保が難しい薬局がいっぱいある

 薬局経営をする上で最大の問題は人材確保、特に薬剤師の確保です。
 最近は大都市周辺ではある程度薬剤師の供給が足りてきているようですが、
 地方都市や過疎地域ではまだまだ供給が足りてません。

 薬剤師が確保できないために店舗を閉めないといけない薬局も見たことがあります。

 人材確保の悩みには、他にも以下のようなものもあります。
  ・産休、育休、傷病休暇などで薬剤師が抜けた穴を、埋めてくれる薬剤師がほしい。
  ・正社員ではなく、忙しい時間帯だけ勤務してくれるパートタイマーがほしい。
  ・採用後に教育する手間や時間が取れないため、即戦力の人材がほしい。

理由② 薬局経営が今までよりも利益を出しにくくなっている

 昨今の薬価改定(薬の値段の引き下げ)や
 調剤報酬(薬局がもらえる手数料)の度重なる減少のせいで、
 以前と比べると薬局経営は利益が出にくくなってきているんですよね。
 なので、

  薬剤師の確保はしっかりしたいけど、
  人件費や人材確保に必要な経費はなるべく抑えたい。


 これが多くの薬局経営者の気持ちなんです。

 薬局経営の悩みには他にも以下のようなものもあります。
  ・近隣医院の医師がすでに高齢で、あと何年医院が続くかわからないので
   会社都合でやめさせにくい正社員はなるべく雇いたくない。
  ・採用時に派遣会社や人材紹介会社を利用すると、大きな費用が必要になってしまう。

理由③ できるだけ優秀な薬剤師を採用したい

 人材採用時に、薬局経営者は
  できるだけ優秀な薬剤師を採用したい!
 という希望を持ってます。

 ここでいう“優秀な”というのは、
 薬剤師としての知識や技術が優れているというのも含みますが、
 それ以上に 職場の上司や同僚、周辺地域の患者さんや
 近隣医院の医師たちといい人間関係を作ることができるスキル
の方が
 重視されることが多いです。

 病院や薬局で多くの薬剤師と接したことがある人は心当たりがあるかと思いますが、
 ここだけの話、薬剤師ってちょっと変わった人が多くないですか?ww
 (もちろん僕も含みますw)

 薬剤師としての多くの知識や技術を持っていたとしても、
 周囲の人たちといい人間関係が作れないと
 職場の雰囲気の悪化や薬局の評判の低下に関わってきますよね。
 経営者にとって、これはとても大きな問題です。


 なので、経営者としてはそういった意味で“優秀な”薬剤師を採用したいんです。

薬局がフリーランス薬剤師を採用するメリットは?

 では、実際に薬局がフリーランス薬剤師と契約をするとどんなメリットがあるでしょう。
 フリーランス薬剤師と契約をした時のメリットを4つ挙げてみます。

メリット1 期間を限定して契約することが可能。

 薬局経営者にとっては、必要な期間だけ働いてもらい
 必要がなくなれば契約を終了する、ということができます。

 これだけを読むと薬局側が非人道的な契約をしているように聞こえるかも知れませんが、
 あらかじめ契約期間が決まっていると
 フリーランス側も次の契約先を前もって探すことができます。

 またこういった薬局の都合の大きな契約は、比較的報酬が高いことが多いため、
 フリーランス側にもメリットがあることが多いです。

メリット2 過去の薬剤師経験が多いため、即戦力になりやすい。

 フリーランスとして場数の多く踏んでいたり、
 長くフリーランスを続けていたりする薬剤師は、即戦力になることが多いです。

 薬局によって隣接医院の診療科や採用されている薬は違っても、
 基本的な仕事内容は似てますからね。

 新卒や薬局経験のない薬剤師と比べると、かなりの差があると思いますし
 薬局経営そのものに詳しい薬剤師だとさらに強力な味方になってくれるはずです。

メリット3 直接交渉ができれば、紹介費用がカットできる。

 採用時に派遣会社や人材紹介会社を利用すると、
 その費用(紹介料)ってバカにならないくらい大きいんです。

  例:薬剤師(年収500万円)を人材紹介会社に紹介してもらった場合
     ➡ 人材紹介会社への紹介料 100~150万円

 薬局経営上で必要なお金とは言え、結構大きな出費です。

 でももし薬局経営者がフリーランス薬剤師と直接交渉することができれば、
 この手数料はカットすることができます。

 ここで浮くお金の一部を、フリーランス薬剤師への報酬増加にあてることで
 より質の高い薬剤師を採用できる可能性が上がります。

メリット4 フリーランスには、比較的“優秀な”薬剤師が多い。

 薬局業界はかなり狭いので、薬剤師としての実績や評判は
 薬局業界のパイプを使って確認できることが多い
んです。

 前の職場が県内や近隣県であれば、所属の薬剤師会や医薬品卸業者の人たちから
 情報を得ることができます。

 薬局側としては、採用を検討している薬剤師の評判を聞いた上で
 本当に採用するかを決めることができますよね。

 フリーランス薬剤師は、契約先からの評判が悪いと契約の更新がされなかったり
 次の薬局との契約ができにくくなったりするので、
 評価や評判を大切にしてる人が多いように感じます。

 というか、契約先からの評判が悪い薬剤師はフリーランスを続けられません…。

 結果的に、フリーランスを長く続けられている人には
 比較的“優秀な”薬剤師が多いということになります。

フリーランス薬剤師になるメリットは?

さて、今までは薬局経営者の視点でのメリットをお話してきました。
ここからはフリーランス薬剤師側のメリットについてお話していきます。

メリット1 働く場所を選びやすくなる

 フリーランスのイメージといえばまずこれですよね。
 僕個人としても、フリーランスになる最大のメリットはこれだと感じてます。

 僕の場合、いろんな地域に住むことそのものが1つの楽しみなんです。
 引っ越しをするたびに周囲の環境がガラッと変わるので、
 ちょっとした異世界転生のような感覚で新しい生活を楽しむことができてます。

 僕の知り合いには、リゾート地の近くにある薬局と契約して
 仕事をしながらリゾートも楽んでいる薬剤師もいます。

 また、正社員として薬局に就職してみたものの、
 実際に働いてみると職場の人間関係がよくなかったり、
 周囲の生活環境が自分に合わなかったりすることってありますよね。

 フリーランスであれば、そういった時は早めに契約を終了させて、
 よりよい職場を探すこともできます。

 移動や引っ越しなどのフットワークが軽いことは、
 薬局側からも喜ばれることなので、移動が気にならない人はより向いてるかも。

メリット2 長期の休暇を取りやすい

 サラリーマンの長期休暇は、長くても1~2週間くらいになるかと思いますが、
 フリーランスの場合、薬局との契約がない時期は“休暇中”のようなものなので
 その気になれば、本人の休みたい期間だけ休暇にすることもできます。

 そういった休暇を計画的に利用すれば、契約と契約の間に
 日本1周や世界1周などに行くこともできます。
 (残念ながら、休暇中は収入がないけどね)

メリット3 時間単価が高くなりやすい

 これはフリーランスのタイプにもよるんですが、
 一般的には薬剤師として働く時の時間単価が高くなることが多いです。

 一般的なアルバイトやパートタイマーの薬剤師だと、
 1時間2,000~3,000円くらいが相場かと思います。

 フリーランスでは1時間5,000円以上の契約も多くあります。
 私も実際に1時間10,000円や1ヶ月約100万円で仕事を受けたことがあります。

 単価が高くなりやすい理由については、この後にフリーランスのタイプごとの詳細を
 解説をしていくのでそちらの方で詳しくお話したいと思います。 

フリーランス薬剤師になるデメリットは?

 残念ながら、フリーランス薬剤師にもデメリットはあります。
 ここからはフリーランス薬剤師のデメリットについてお話していきます。

デメリット1 収入が安定しない

 フリーランス最大のデメリットといえば、これだと思います。
 薬剤師に限らず、どの業種のフリーランスでも同じ悩みを持っています。

 2021年1月の現時点での薬剤師の需要はまだありますが、
 今後もずっと薬剤師の需要があるか、働きたい時に働きたい地域で仕事があるか、
 将来も現在のレベルの報酬が維持できるのか など
 収入に対しての不安は常に付きまといます。

 この不安を解消するには、
 薬剤師とは別の収入源を持つことで収入を安定化させるしかありません。
 フリーランス薬剤師向けの副業についてもそのうち記事にしたいと思います。

デメリット2 薬剤師以外の仕事が増える

 僕がフリーランスになった後、一番苦労したのがこのデメリットでした。

 独立してフリーになるということは、全ての仕事を自分1人でするということです。
 つまり、今まで会社の経理担当の人たちがしてくれてたような事務作業も、
 今後は自分で処理しないといけないようになります。

 例えば、確定申告、納税、その他諸々の行政への手続きや届け出とかですよね。
 薬剤師の知識以外にも、法律、税務、経営などの知識が必要になります。

 ただ、法律や経営について勉強することで、
 経営者の視点や考え方が少しずつ理解できるようになってきて、
 薬局経営者の人との条件交渉にも役立つので、勉強はした方がいいと思います。

デメリット3 会社員より社会保障が少ない

 これはフリーランスのタイプによるんですが、最も影響を受けるのは
 個人事業主としてフリーランス薬剤師をする人です。

 個人事業主として独立すると
 健康保険が国民健康保険へ、厚生年金が国民年金へ、雇用保険は対象外へ
 社会保障面では会社員時代とは大きく変わってしまいます。

 そして、万が一の時の保障内容や将来の年金額が少なくなる場合が多いです。

 ただし、事業が軌道に乗って、ある程度報酬がもらえるようになると
 経費計上で節税を行ったり優遇税制の制度を利用できたりして
 経営上のメリットはあるので、過度に心配する必要はないかなと思います。

フリーランス薬剤師になるには、まず何から始めたらいい?

 フリーランスになる上で最も大切なことがあります。それは、

 フリーランスになる目的を明確にしておくこと。

 あなたが今後の人生に何を求めているのか、
 あなたは何を目的に仕事するのか、といった点をはっきりさせると、
 フリーランスになった方がいいのか、正社員として働いた方がいいのか、
 薬剤師そのものをやめた方がいいのか、答えがはっきりしてくると思います。

 以下に目的になりそうな例をいくつか挙げてみました。

「フリーランスってなんか言葉の響きがカッコイイから」「今世間で流行ってるから」「友達がなってるから」

 大きな決断をする時には、憧れや勢いはとても大事だと思います。

 ただ、フリーランスになった後の自分自身のビジョンや目的がはっきりしてないなら、
 それらがはっきりしてからフリーランスになっても遅くないはずです。
 もう少し今後のことを考えて、準備に時間をかけてみましょう。

「今よりもお金を多く稼ぎたいから」

 これは多くの人が考えることだと思います。そして実際に可能です。
 契約内容次第では、正社員時代の年収から大きくアップする可能性があります。

 ただし、決してラクしていっぱいもらえるというわけではありません。
 収入の不安定化、薬剤師以外の業務の増加、その他諸々の苦労が増えた代わりに
 収入も増えると考えた方がいいんじゃないかと思います。

 あと、シンプルに報酬が高いところはそれだけの理由があります。
 例えば、薬局のある場所が山間部、過疎地、豪雪地域などであれば、
 他の薬剤師も敬遠しやすいので、単価が高くなりやすいですよね。

 収入の増加だけじゃなく、支出の抑制も併せて行うと
 正社員時代よりもかなり多くのお金を手元に残すことができます。
 この方法についても、いつか記事にしたいと思います。

「今よりも時間を自由に使いたい」

 これも多くの人が考えることだと思います。そして実際に可能です。

 1日の働く時間を5時間と少なめにしたり、
 1週間の中で勤務する日を3日だけにしたり、
 契約時に薬局とお互いの希望をすり合わせることで可能になります。
 短期間の契約や短時間の勤務を望む薬局もあるので、ニーズもあります。

 また、薬剤師以外の仕事(経理業務など)に時間を取られるのも嫌だという人への
 対応策もあるんですが、ここでは省略し、詳細は次回お話ししたいと思います。

「今の職場を早く辞めたいから」

 以前にブログ内でフリーランス薬剤師についての質問をいただいた時、
 上の目的を持った方がいらっしゃいました。

 僕自身、しんどいと感じている職場を離れることには大賛成なんですが、
 フリーランスになる必要があるかというと、そこは別の話だと思うんです。

 なぜ今の職場を辞めたいと感じているのか、
 どうやったらそれを回避することができるのか、
 その先でどんな人生を過ごしたいのか、仕事はどんな形で続けていきたいのか、
 そういったことをしっかりと考えた上で、
 必要であればフリーランスになるというのが一番いいかなと思います。

次回テーマ フリーランス薬剤師の3タイプの紹介

 ということで、今回はフリーランス薬剤師についての基礎知識をお話ししました。
 かなり長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。

 内容が分かりにくいところや疑問点などがあったら、
 問い合わせフォームからご連絡よろしくお願いします。


 次回ですが、フリーランス薬剤師には大きく分けて3つのタイプがあります。
 それぞれのタイプの特徴やメリット・デメリットについて解説していきたいと思います。

 それではまた次回お会いしましょう。ありがとうございました。

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